(付録)佐渡の鬼太鼓一覧
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佐渡の鬼太鼓は、佐渡地元では「おんでこ」と呼ばれ、神社例祭に奉納されると共に各戸を回り門付けを行う。大きく分類すると相川系(相川, 真野湾沿岸の集落)、国仲系(両津, 新穂, 畑野(国仲), 真野, 金井, 佐和田)、前浜系(小木, 羽茂, 赤泊, 畑野(南佐渡))の3系統がある。地区で分類されるわけではないが概ね合致する。さらに細分化して潟上系、一足系、豆まき系、前浜系、花笠系の5系統に分離される場合もあるが、鬼太鼓が島内に広まっていった経緯を示す史実的記録も見当たらず、分類当事者による各集落毎に明確に分類されている訳でもなく、各集落で独自性が強い鬼太鼓を細かく分類する事に大きな意味は持たないので、ここでは3系統に集約した。
下記一覧は「『新潟県の民俗芸能』「第6章悉皆調査一覧」」をベースに、筆者独自の判断で加筆・修正したものである。江戸中期の佐渡には、190町村があり、神社例祭は年間140件、そして120組を越える鬼太鼓が島内全域では存在したと言われているが、それを具体的に示す資料は見当たらず正確性には不安を残す。4月15日(島開き)には約40ヶ所の集落で神社例祭が行われ鬼太鼓が登場する。鬼太鼓の数もすごいが、鬼太鼓が奉納される神社の数もすごい!現在は何組の鬼太鼓が活動を維持できているのだろうか?原則的に男衆の担当だったのだろうが、人口減少に伴い女性や子供たちが参加する集落も目に付く。
※下記一覧表は、様々な資料に基づいてできるだけ漏れが無いように作成したが、誤った内容、現在も活動中かどうか
 までは把握できていない。気になる個所がありましたらご連絡を賜りたく。

国仲系鬼太鼓の特徴

リズミカルな太鼓に合わせて鬼が優雅に勇壮に、そしてまさに鬼の化身が如くに舞う。集落によっては、より激しく舞い、時には獅子が登場して鬼と絡む。まさに伝統芸能の様。一般的には赤鬼と黒鬼が1匹ずつ舞うが、湊鬼太鼓の例祭では2匹が対面して同時に舞う。佐渡の鬼太鼓と言えばこの「国仲系鬼太鼓」を指す。

当方の集計によれば80組がこの型である。
古式鬼面で佐渡鬼太鼓本家の鬼舞


国仲系鬼太鼓の発祥と言われているのが吾潟鬼太鼓であるが、その原型となったと思われる城腰に伝わる「花笠踊:鬼舞」を右の動画で紹介する。2025年の久知八幡宮例祭にて撮影したものである。天文年間(1500年代)に始まったとされ、吾潟鬼太鼓の結成が1796年頃なので、吾潟鬼太鼓よりも早い。これを見れば様々な所作が鬼太鼓と共通していることが分かる。さらに観衆が仰いでいる団扇(うちわ)を提灯に持ち替えれば・・・。

花笠踊:鬼舞 オンマウスで再生開始
フルサイズ動画はこちら

相川系鬼太鼓の特徴

黒面を被った豆蒔きが太鼓に合わせて舞い、鬼は薙刀や棒を持ったまま立っている。また鬼は面を帽子の様に被っている。 明らかに国仲系とは様相が異なっており、起源もまた異なると推測される。
片足を上げて踊る一足流は、原始相川系をより活動的に表現したと思われる。一番最初に一側流を始めた集落が相川地区なら間違いはないだろう。

当方の集計では26組がこの型である。
中原・鍛冶町まつり


前浜系鬼太鼓の特徴

鬼の衣装や面の様子は国仲系と似ているが、踊り方は場面で異なり、鬼衣装を身に着けた1匹の鬼だけで舞うこともあれば、赤鬼黒鬼の2匹が同時舞う場合もあり、さらには面を被らず祭り衣装の人と2匹で舞うこともある。さらには「打ち子」が進行役となって加わり、3名が太鼓の前で賑やかに舞う場面もある。舞の所作は国仲系とも相川系とも全く異なる。

当方の集計では16組がこの型。
赤泊まつり(乙祭)門付け

 

各集落の鬼太鼓を紹介する前に、鬼の衣装や面について考察する。衣装は、神社の神官衣装を基本とし、袖は踊るのに邪魔になるので襷(たすき)の中に仕舞う。袴も小ぶりにして裾を束ねて足首で縛る。足袋(たび)を履き草履(ぞうり)を履く。神社の鈴に付いている鈴緒を背中に垂れ流して終わり。神社様式と酷似しているのが良くわかる。原型となった「花笠踊:鬼舞」も神社奉納なので、この流れは正しいだろう。面と太鼓を叩くばちは「花笠踊:鬼舞」に習う。但し、鬼舞では1匹の鬼しか登場せず、鬼瓦を参考にして雄鬼と雌鬼の2面を創出したと思われる。もともと鬼舞の面も鬼瓦を参考にしたかもしれない。
解けない謎がいくつかある。一つは、多くの鬼衣装にある逆三角形の模様である。鱗文と呼ぶそうだが、神社とも鬼舞とも無縁だろう。もう一つが手甲と胸当てである。鬼舞もこれを身に着けていて、剣道の胴と小手にも通じており、神社でお祓いをした後に何か(邪気?)と戦うつもりか?さらに、吾潟の鬼には角があり湊や夷にも角がある。ところが吾潟に隣接する新穂地区では角のない鬼をよく見かける。そして、潟上鬼太鼓には角が無く鱗文模様の衣装を身に着けている。

この辺りにも、国仲系鬼太鼓が広まった道筋解明のヒントがあるのではないだろうか?つまり、吾潟鬼太鼓が東に向かって広がっていき、潟上鬼太鼓が西に向かって広がった?さらには、前浜系の鬼太鼓と「花笠踊:鬼舞」はごわごわした髪の質感や面表情が似ていて、国仲系鬼太鼓を経由しないで独自に南佐渡に広まったか?さらには相川系の鬼も2匹いるので、国仲系を参考にしている可能性がある。しかしながら「若一王子神社 」の相川系の鬼には角があり鱗文模様の衣装なので、吾潟と潟上の両方の特徴を持っている。前浜系および相川系鬼太鼓の最も古い鬼太鼓がどれなのかを知れば謎が解けるだろうか。

本編最後に、鬼太鼓とは区別されるものの、伝統的な鬼舞や集落で創作された太鼓を紹介する。

 

系統 地区 集落/団体 名称 神社   備     考






両津 吾潟 鬼太鼓 牛尾神社 国仲系鬼太鼓の発祥と言われている
  秋津 鬼太鼓 熱田,木崎神社  
  鬼太鼓 三社,二所神社  
  馬首 鬼太鼓 気比神社  
  梅津 鬼太鼓 木本神社  
  浦川 鬼太鼓 諏訪神社 昭和初期に春日から習った
  鬼太鼓 諏方神社 明治初年頃潟上から習ったと伝えられる
  大川 鬼太鼓 津神神社 獅子が加わる
  上横山 鬼太鼓 金峯神社  
  柿野浦 鬼太鼓 伊豆奈神社 大獅子が加わる
  春日 鬼太鼓 春日神社  
  潟端 鬼太鼓 諏訪神社  
  河崎 鬼太鼓 水尾神社  
  加茂歌代 鬼太鼓 赤井神社  
  加茂歌代:河内 鬼太鼓 堀内神社  
  北小浦 鬼太鼓 熊野神社  
  下久知 鬼太鼓 久知八幡宮  
水津 鬼太鼓 白山神社
  住吉 鬼太鼓 住吉神社  
  立野 鬼太鼓 三社神社  
  玉埼 鬼太鼓 諏訪神社  
  椿 鬼太鼓 荒崎神社  
  豊岡 鬼太鼓 小田原神社  
  長江 鬼太鼓 三峰,熱串彦神社  
  羽吉 鬼太鼓 羽黒神社  
  福浦 鬼太鼓 赤井神社  
  真木 鬼太鼓 河崎神社  
  鬼太鼓 八幡若宮神社  
  両尾 鬼太鼓 両尾神社  
  鷲崎 鬼太鼓 矢崎神社  
金井 和泉鬼太鼓 荒貴神社  
  大和田 鬼太鼓 新保八幡宮 同神社で奉納される4組の鬼太鼓の内の一つ
  尾花 鬼太鼓 熊野神社 「春日鬼組」によれば本屋敷と別に記載
  尾花:本屋敷 鬼太鼓 熊野神社  
  金井新保 鬼太鼓 新保八幡宮 同神社で奉納される4組の鬼太鼓の内の一つ
  金井新保(2) 鬼太鼓 新保八幡宮 同神社で奉納される4組の鬼太鼓の内の一つ
  貝塚 鬼太鼓 白山,三嶋神社  
  三瀬川 鬼太鼓 住吉神社  
  中興 鬼太鼓 中興神社  
  西方 鬼太鼓 新保八幡宮 同神社で奉納される4組の鬼太鼓の内の一つ
  平清水 鬼太鼓 白山神社  
  水渡田 鬼太鼓 住吉神社  
  大和 鬼太鼓 唐崎神社,両所大神宮  
  吉井本郷 鬼太鼓 八幡若宮神社  
佐和田 石田 鬼太鼓 二宮神社  
  河原田諏訪町 鬼太鼓 諏訪神社  
  窪田 鬼太鼓 髙濱神社  
  沢根 鬼太鼓 白山神社  
  真光寺 鬼太鼓 村上神社  
  中原 鬼太鼓 中原神社  
  長木 鬼太鼓 八幡若宮神社  
  二宮 鬼太鼓 二宮神社  
相川 石花 鬼太鼓 素盞鳴神社  
  後尾 鬼太鼓 石動神社  
  北立島 鬼太鼓 熊野神社  
  相川下戸町 御太鼓 善知鳥神社  
  千本 鬼太鼓 八幡神社  
  南片辺 御太鼓 白山神社  
新穂 新穂青木 鬼太鼓 熊野神社  
  新穂青木 鬼太鼓 熊野神社  
  新穂井内 鬼太鼓 日吉神社  
新穂瓜生屋 鬼太鼓 五社神社
  新穂長畝:内巻 鬼太鼓 日吉神社  
  新穂大野 鬼太鼓 日吉神社  
  新穂潟上 鬼太鼓 牛尾神社  
  上新穂・北方 鬼太鼓 両天満宮  
  新穂正明寺 鬼太鼓 石動神社  
  新穂長畝 鬼太鼓 気比神社  
  新穂 鬼太鼓 日吉神社・天神堂  
  新穂舟下 鬼太鼓 日吉神社  
  新穂皆川 鬼太鼓 白山神社  
畑野 大久保 鬼太鼓 白山神社  
  栗野江 鬼太鼓 加茂神社  
  寺田 鬼太鼓 寺田神社  
  畑野 鬼太鼓 熊野神社  
宮川:宮浦 鬼太鼓 一宮神社
  宮川:後山 鬼太鼓 御食神社  
  目黒町 鬼太鼓 熊野神社  
真野 金丸 鬼太鼓 引田部神社  
  竹田   大膳神社 「春日鬼組」によれば合沢と別に記載
  竹田:合沢 鬼太鼓 大膳,熱田神社  
  真野:浜中 鬼太鼓 瀧谷神社  
  吉岡   總社神社  
  四日町 鬼太鼓 八幡若宮神社  

小木 鼓志の会 鬼太鼓 (イベント会場) 「2021小木たらい舟サザエ祭り」で披露された創作鬼太鼓
--- 鼓童 鬼太鼓 (イベント会場) 「EC2022特別フリンジ」で鼓童が鬼太鼓をテーマにして演奏
--- 航空自衛隊 鬼太鼓 佐渡分屯基地 2025年時点で活動休止中
--- サドラム (鬼太鼓風) (イベント会場) 「EC2023特別フリンジ」で披露された創作鬼太鼓




佐和田 青野 鬼太鼓 白山神社  
  沢根五十里 鬼太鼓 金北山神社  
  沢根五十里 鬼太鼓 白山神社  
  沢根五十里田中 鬼太鼓 白山神社  
  中原,鍛冶町 鬼太鼓 若一王子神社  
  山田(尾山)   白山神社 「春日鬼組」によれば西山田と別に記載
  山田:西山田 鬼太鼓 白山神社  
  沢根五十里東野 鬼太鼓 小平神社  
相川 稲鯨 御輿 北野神社
相川江戸沢町 御太鼓 塩竈神社
  相川大浦 御太鼓 尾平神社
  大倉 鬼太鼓 大幡神社  
  北川内 小獅子舞 熊野神社  
  御太鼓 三宮神社  
  高瀬 御太鼓 三宮神社  
  達者 鬼太鼓 白山神社  
  戸地 御太鼓 熊野神社 鬼は登場せず豆まき翁だけ
  二見 御太鼓 二見神社  
  米郷 御太鼓 米郷大神宮  
  八幡 御太鼓 八幡宮  
小木 小木 小獅子舞 稲荷・木崎・琴平社  
  宿根木 ちとちんとん 十上神社・白山神社   
羽茂 小泊   白山神社  
赤泊 赤泊:腰細,山田 鬼太鼓 春日神社  
  徳和:山寺 鬼太鼓 諏訪神社  
  徳和:浅生 鬼太鼓 大椋神社  




両津 岩首 鬼太鼓 熊野神社  
畑野 浦ノ河内 鬼太鼓 十二権現社  
  小倉 鬼太鼓 物部神社  
  多田 鬼太鼓 諏訪神社  
  多田:黒根 鬼太鼓 小田原神社  
  浜河内 鬼太鼓 河内神社  
  丸山 鬼太鼓 丸山神社  
丸山 鬼太鼓 熊野神社
  松ケ崎 鬼太鼓 松前神社  
  柳久保 鬼太鼓 丸山熊野神社  
小木 上野 大々神楽 木崎神社  
赤泊 赤泊 鬼舞 赤玉神社  
  赤泊 鬼太鼓 神明社  
  徳和 大獅子 大椋神社  
  徳和山寺   徳和,諏訪神社  
  筵場 鬼太鼓 白山神社  
羽茂 羽茂本郷 鬼太鼓 菅原神社  




両津 赤玉 鬼舞 赤玉神社 花笠踊りの中の演目の一つ
  城腰 鬼舞 久知八幡宮 花笠踊りの中の演目の一つ
  住吉 姉樽 住吉神社 グループ名「姉樽」、演目「樽ばやし」
  鷲崎 海府太鼓    
    内海府カンゾウ太鼓    
相川 姫津 薬師太鼓 万福寺  
--- サドラム 竹太鼓 (イベント会場) サドラムは佐渡島を拠点とする竹太鼓集団
  ※地区:旧市町村(両津、金井、佐和田、相川、新穂、畑野、真野、小木、羽茂、赤泊)
  YouTube(ステレオ工房ポニー), YouTube(他), WEBページ

 

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